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数学の教科書で敵を殴る,香港発のアクションRPG「The Book of Prosperity」。本業のかたわら7年間,1人で作り続ける開発者に話を聞いた[OIGS2026]
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印刷2026/10/04 10:00

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数学の教科書で敵を殴る,香港発のアクションRPG「The Book of Prosperity」。本業のかたわら7年間,1人で作り続ける開発者に話を聞いた[OIGS2026]

画像ギャラリー No.001のサムネイル画像 / 数学の教科書で敵を殴る,香港発のアクションRPG「The Book of Prosperity」。本業のかたわら7年間,1人で作り続ける開発者に話を聞いた[OIGS2026]
 2026年10月3日,4日に大阪・コングレスクエア グラングリーン大阪で開催されたインディーゲームイベント「OSAKA INDIE GAMES SUMMIT 2026」(以下,OIGS 2026)に,香港の個人開発者SingKeys氏が手がける2DアクションRPG「The Book of Prosperity」が出展された。
 本業のかたわら,1人で7年かけて開発を続けてきた作品で,展示イベントへの出展は今回が初めてだという。

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忘れることが“繁栄”とされる世界で,数学の教科書を振り回す


 本作の舞台は,ネオンがきらめく香港をモチーフにした,ピクセルアートの不思議な世界だ。
 主人公は口の悪い学生Cyrus。彼はある日,痛みを伴う記憶から人々を守ると称する強大な組織「The Circle」が支配する並行世界へと引き込まれてしまう。

学校が舞台のパートから物語は始まる。「学校に行きたくない」というぼやきに,香港の学生生活の空気が漂う
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 ゲーム内のメニュー画面は,タイトルにもなっている「繁栄の書」という本のデザインになっている。そのページに記されているのは「記憶することは苦しむこと。忘却することは栄えること。」という一節。過去を忘れることこそが救いとされる,この世界のいびつさを感じさせる演出だ。

メニュー画面は「繁栄の書」そのもの。右ページには操作説明が並ぶ
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 とはいえ,序盤のCyrusはごく普通の学生にすぎない。そんな彼の最初の武器は,なんと分厚い数学の教科書。魔法を使いこなすようになる前の彼は,カバンから取り出した教科書で,目の前の敵を殴り倒していくことになる。


すべての操作は“タイミング”が鍵


 ブースには2台の試遊機が並び,ストーリーとゲームプレイを15分間通して遊べるフル体験版と,戦闘だけをタイムアタック形式で楽しめる「BATTLE ONLY」モードの2種類が用意されていた。

左がフル体験版,右が「BATTLE ONLY」モード。机の上には,SingKeys氏のアイコンでもある鳥のぬいぐるみの姿も
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 戦闘は,パリィや回避,スキルコンボ,リソース管理を軸にしたもので,タイミングよく攻撃をさばき,反撃を叩き込むことが求められる。屋上や洞窟,入り組んだ街中をパルクールで駆け抜ける移動アクションも特徴だ。

 実際にプレイしてみて特徴的だと感じたのは,攻撃時に表示される“円”だ。この円が縮んで戻ってくる瞬間に合わせてボタンを押すと,スタミナを消費せずにスキルを連続で発動できる。リズムゲームのような判定がコンボの気持ちよさに直結していて,うまくつながったときの手応えはなかなかのものだった。

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タイミングよく攻撃をつなげると,派手なエフェクトとともにスキルが決まる
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 会場には,開発者のSingKeys氏本人もブースに立っていた。7年間,本業を終えてから自分の時間でゲームを作り続けてきたという同氏に,開発のきっかけや本作に込めた思いを聞いた。

4Gamer:
 本作は7年間,1人で開発されているそうですね。普段は開発に専念しているのでしょうか。

「オニカッコウ」のお面を思いきり被るSingKeys氏
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SingKeys氏:
 いえ,フルタイムの仕事をしていて,仕事が終わってから自分でゲームを作っています。

4Gamer:
 本業を持ちながら7年間,同じゲームを作り続けるのは簡単なことではないと思います。何が原動力になっているのでしょうか。

SingKeys氏:
 7年前から,僕がこのゲームを作っていることを知って,楽しみにしてくれているプレイヤーがいるんです。その期待を裏切るわけにはいきません。
 それに,自分を代表するようなゲームを作りたかったんです。フルタイムの仕事をするだけで人生が過ぎていくのは嫌で,自分自身を表せるものを残したいと思いました。

4Gamer:
 そもそも,香港を舞台にしたゲームを作ろうと思ったきっかけは何だったのでしょう。

SingKeys氏:
 当時,「UNDERTALE」(PC / PS4 / PS Vita / Nintendo Switch / Xbox One / Xbox Series X)を遊んでいたんです。あれも1人で作られたゲームで,大好きな作品です。1人でもこんなに面白いゲームが作れるんだと思って,「自分にもできるかもしれない」と始めました。
 それと,香港を題材にしたゲームって,有名なのは「Sleeping Dogs」(PC/PS3/Xbox 360,邦題:スリーピングドッグス 香港秘密警察)くらいで,ほかにほとんどないんですよね。だから,香港のゲームを作りたかったんです。

4Gamer:
 日本のゲームファンには,九龍城砦がよく知られています。本作にもそういった場所は登場しますか。

SingKeys氏:
 九龍城砦は少し前の時代のものですが,本作の舞台はもっと現代の香港です。ただ,画面の雰囲気づくりでは参考にしている部分もあります。
 香港らしさはアートだけでなく,食べ物などの文化面にも盛り込んでいます。

4Gamer:
 試遊した学校のパートは,ご自身の体験がもとになっているのでしょうか。先生にチョークを投げつけられたりとか……。

SingKeys氏:
 一部はそうですが,チョークはないですね(笑)。
 数学の教科書を武器にしたのは,学生時代の教科書がすごく分厚かったからです。「これで人の頭を叩いたら倒れるんじゃないか」とよく考えていて,そのアイデアをゲームに入れました。主人公は魔法も使えるんですが,序盤はカバンに数学の教科書しか入っていない。目の前に敵がいるから,それを取り出して戦うしかないんです。

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「BATTLE ONLY」モードでは,街の中で敵を倒すタイムを競う
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4Gamer:
 タイトルの「繁栄の書」は,その数学の教科書のことではないんですね。

SingKeys氏:
 違います(笑)。「繁栄の書」は,ゲームの後半に登場する本です。この世界のある支配者は,人々に自分たちが魔法を使えることを忘れさせ,魔法を禁じるためにこの本を広めました。主人公は,偶然その“クラック版”を手に入れることになるんです。

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4Gamer:
 Xでは,流行りの新しいギミックではなく,戦闘の手応えとストーリーで勝負したいと書かれていました。本作が他のインディーゲームと違うのは,どんなところだと考えていますか。

SingKeys氏:
 ここに出展されているゲームは,どれも面白いと思います。そのうえで本作は,すべての操作がタイミングを重視しているのが特徴です。
 数学の教科書で攻撃すると円が出ますよね。「osu!」を遊んだことがあれば分かると思いますが,あの円が戻ってきた瞬間にボタンを押すと,スタミナを消費せずにスキルを続けて発動できるんです。

4Gamer:
 Steamのウィッシュリスト登録数は,現在1300件ほどだそうですね。

SingKeys氏:
 4月から始めて,今は1300件ちょっとです。もちろん1万件を目指したいですね。達成できると思っていますが,もう少し頑張らないといけません。
 7年前はネットに公開して,友達の間で少し話題になったくらいで,大きな反響はありませんでした。でも今は,投稿するたびに「いいね」をくれるファンの人たちがいます。

4Gamer:
 ブースにもいる鳥のキャラクターと,「SingKeys」という名前の由来を教えてください。

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SingKeys氏:
 SingKeysは広東語で,鳴き声の音程がどんどん上がっていく鳥(オニカッコウ)のことです。香港では毎朝4時や5時ごろに鳴いて,みんなを起こすんですよ。僕も嫌々起こされている1人ですけど(笑)。
 この鳥は香港をよく表していますし,自分の存在をみんなに知ってほしいという気持ちもあって,この名前にしました。

4Gamer:
 ときどき大きな声で「ここにいるよ」と知らせてくれるわけですね。香港といえば,パイナップルパンやエッグタルトが恋しくなります。

SingKeys氏:
 近いんだから,飛んで来てください(笑)。

4Gamer:
 ありがとうございました!

 「The Book of Prosperity」は2027年の発売を予定しており,Steamでは日本語対応の体験版が配信中だ。
 7年間,本業のかたわらで声を上げ続けてきた“香港の鳥”が作る,香港のためのアクションRPG。数学の教科書を振り回す手応えを,ひと足先に味わってみてはいかがだろうか。


  • 関連タイトル:

    The Book of Prosperity

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