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4Gamerをご覧の皆様こんにちは。クッキングエンターテイナーの大西哲也です。ゲームに登場する料理を実際に作り,料理人ならではの視点から考察する連載「俺のコラボカフェ」。今回もよろしくお願いします。
今回のテーマは,2026年10月9日にSteamで早期アクセスが始まった「Japanese Ramen Simulator」。タイトルのとおり,ラーメン屋さんを経営するシミュレーションゲームです。
ラーメンといえば,日本を代表する国民食の一つ。近年では海外でも「RAMEN」として広く知られ,専門店が次々と誕生しています。そんなラーメンを,食材の仕入れからスープの仕込み,麺茹で,トッピング,接客,店舗経営まで体験できるというのですから,料理人としては気にならないわけがありません。
私自身,飲食店経営を経験してきた人間です。もちろん,ラーメン専門店とは仕事の内容も違いますが,飲食店の大変さはそれなりに知っているつもりです。
というわけで,さっそくゲームを購入してプレイしてみました。
ところが,ゲームを始めて早々,思ってもみなかった感想が飛び出してしまったのです。早くラーメンを作らせてくれよ! と。
スタートラインは,ラーメン作りではなく仕入れ
このゲーム,始まっていきなり何をするかというと,仕入れなんです。パソコンから必要な食材を発注し,届いた荷物を受け取って,店の中に運び入れ,食材を収納する。もちろん,操作方法もよく分かっていない状態ですから,これがかなりしんどいのです。
せっかくラーメン屋になったのだから,早くスープを炊いて,麺を茹でて,ラーメンを作りたい。なのに,まずは届いた荷物を運び,仕入れたものを片付けなければならない。
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そして,実際にラーメンを作り始めたら始めたで,今度は次々に仕事が増えていきます。食材を切って,スープを仕込んで,注文を受けて,麺を茹でて,具材を盛り付けて,料理を提供する。食べ終わった器は下げて洗わなければなりません。使い終わった道具も片付けます。
さらに,お店が繁盛してくると,注文はどんどん複雑になっていきます。この人はネギを2つ,この人は海苔を追加で,こっちは麺が違う……と,ラーメンを作っているはずなのに,気が付けばパズルのような作業に追いかけられている。しかも,ラーメンには物理演算が働いているので,雑に運べば丼から具材がこぼれてしまうこともあります。
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いや,面倒くさい。しかしこれこそが実際の飲食店そのものじゃないか,と感じました。
私は料理が大好きです。新しい食材を試したり,火入れを考えたり,料理を作るという行為そのものが楽しいからこそ,この仕事を続けてきました。ところが,実際の飲食店経営において,料理を作っている時間は仕事の一部分でしかありません。
食材の発注,納品された商品の検品,在庫管理,冷蔵庫への収納,仕込み,清掃,洗い物,ゴミの処理。さらには食材を入れていたダンボールを片付けたり,虫が寄り付かないように衛生環境を整えたり,従業員のシフトを組んだり,設備の不具合に対応したり。
料理をする前にも,料理をした後にも,数え切れないほどの仕事があります。こういった仕事の多くは,お客様の目に直接触れることがありません。
お客様からすれば,ラーメン屋さんはラーメンを作って提供してくれる場所です。もちろんそれで間違いありませんが,実際に一杯のラーメンを提供するためには,その何倍もの作業が裏側に存在しているわけです。
現実にはこのゲーム以上に,もっと細かくて面倒な仕事が山ほどあります。だからこそ,本作がそういった部分をしっかり描いてくれたことに,私は大きな意味を感じました。
ゲーム開発元のワイルドドッグは,実際にラーメン店を訪問して調理を体験し,調理音の収録や食材の実物スキャンまで行ったそうです。なるほど,どうりで妙なところがリアルなわけです。
そして,ぜひ皆さんにも体験してほしい,とくに面白いと思ったシステムがあります。お客様にお水を提供すると,待ち時間に大きな猶予が生まれるんです。
しかも,その効果がかなり強力です。お水を出しておけば,まだまだ待ってくれるのかと思うくらいで,ゲームの攻略としても非常にありがたい仕組みです。
さすがに現実のお客様が,水を一杯飲んだだけで何十分も待ってくれるとは限りません。でも,飲食店において大切なことを非常にうまく表現していると思います。
実際に,混み合っていてなかなか料理が出てこないとき,店員さんから,お待たせして申し訳ありません,今順番にお作りしていますので,もう少々お待ちください,と一言伝えられ,お水を出してもらえたらどうでしょう。少なくとも,何の説明もなく放置されているときよりは,ずっと安心できるのではないでしょうか。待っている人が自分の状況をどう理解しているかも大切なんです。
飲食店を利用する人がこのゲームをプレイしたら,普段何気なく入っているラーメン屋さんに,今まで以上の敬意を持てるようになるのではないでしょうか。
お坊さんに出すなら,肉も魚も五葷も使わない
さて,こんな感じでラーメン作り以外のところも非常に作り込まれたこちらのゲームですが,ラーメンは本当にスープから麺,具材に至るまで自由にカスタマイズして作れるところが大きな魅力です。
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そして本作には,そんな料理人の腕を試すような特別なお客様が登場します。ラーメン評論家やお金持ちなど,普通のお客様とは異なる要求を持つ,いわゆる「ボス客」です。なかでも今回,私が料理の題材として興味を持ったのが「お坊さん」です。
攻略情報によれば,植物由来の食材でうま味や香り,彩りを高めたラーメンが求められるというのです。なるほど,お坊さんに出すラーメン。これは料理人として,ぜひ考えてみたいテーマです。
肉も魚も使わず,野菜だけでラーメンを作る。最近ではヴィーガンラーメンというジャンルも広まっていますから,それほど珍しい発想ではありません。しかし,今回のテーマは「お坊さん」です。せっかくなら,もう少し深く掘り下げてみましょう。
ここで注目したいのが,日本の仏教とともに発展してきた「精進料理」です。
精進料理は,仏教の戒めや修行の思想を背景として,動物性食材を避け,植物性食材を中心に構成されてきた料理です。ただし,精進料理には単純な菜食とは異なる特徴があります。
その一つが「五葷(ごくん)」です。
五葷とは,ネギ,ニンニク,ニラ,ラッキョウなどに代表される,香りの強いネギ属の植物のこと。具体的に何を含めるかは,地域や宗派,時代によって異なりますが,伝統的な禅寺の精進料理では,こうした食材を避ける考え方があります。今回はあえて厳格な条件を設定してみたいと思います。
というわけで今回は,ゲームに登場するお坊さんから着想を得て,肉も魚も五葷も使わない,本格的な精進ラーメンを考えてみましょう。
昆布・干し椎茸・炒り大豆の精進醤油ラーメン
◆材料(2人分)
【三重出汁】
水:1,000g
昆布:15g
干し椎茸:12g
乾燥大豆:25g
【かえし】
濃口醤油:50g
きび砂糖:2g
【香味油】
米油:30g
椎茸:25g
焙煎ごま油:2g
【麺・トッピング】
中華麺(卵不使用):2束
車麩:2〜4枚
舞茸:80g
三つ葉:適量
【車麩の煮汁】
三重出汁:30g
醤油:3g
砂糖:1g
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今回作ったのは「昆布・干し椎茸・炒り大豆の精進醤油ラーメン」です。目指すのは,単に野菜の出汁で麺を食べる料理ではなく,一杯のラーメンとして,しっかりとしたうま味,奥行きのある香り,食べ応えを成立させることです。
まず重要なのが,スープのうま味です。一般的なラーメンでは,豚骨,鶏ガラ,魚介類などを使って出汁を取りますが,今回それらは使用できません。そこで主役となるのが,昆布と干し椎茸です。
昆布にはグルタミン酸,干し椎茸にはグアニル酸といううま味成分が多く含まれています。これらを組み合わせると,それぞれを単独で使用した場合よりも,うま味を強く感じられるのです。
ただし,うま味を強くすればいいわけではなく,ラーメンらしい食べ応えを作るには,それ以外の要素も重要です。そこで,今回のスープにもう一つ「炒り大豆」の香ばしさとおいしさを加えてみました。
さらに,米油に椎茸の香りを移した香味油を使い,少量の焙煎ごま油で香ばしさを補います。
チャーシューの代わりには車麩を使用。精進料理でも使われる小麦由来の食材で,出汁をよく吸い,焼き目を付けることで香ばしさも作れます。さらに舞茸を焼き,三つ葉で爽やかな香りを補いました。
こうして動物性の食材を使わずとも,しっかりとうま味があり,香りと食べ応えもあるラーメンが完成しました。お坊さんもきっと満足してくれると思います。
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さて,今回はJapanese Ramen Simulatorをきっかけに,飲食店の仕事の面白さと大変さを,あらためて考えることができました。苦労は多いけれど,お客様の満足を考えるのは,とても楽しい仕事でもあると思います。
皆さんもぜひJapanese Ramen Simulatorをプレイして,ラーメン店の店主になってみていただきたいです。そして実際のラーメン屋さんに行ったときには,目の前の一杯ができるまでに,どれだけ多くの仕事が積み重なっているのか,少しだけ想像してみてください。いつものラーメンが,また違って見えてくるはずです。
面白いと思った方,料理を作ってみた方などは,ぜひ「#俺のコラボカフェ」「#COCOCORO」を付けてSNSで教えてください。
それでは,またお会いしましょう。したっけ!
■■大西哲也(クッキングエンターテイナー)■■ あるときは料理研究家,またあるときは「COCOCOROチャンネル」のYouTuber。しかしてその実体は……料理を通じて多くの人を喜ばせたいクッキングエンターテイナーだ! ちなみに近頃は,ハマグリや干し椎茸など,さまざまな食材を組み合わせた出汁の研究にも取り組んでいるとのこと。そんな中で取り上げることになった今回の精進ラーメンは,動物性食材を封印した実験。使える材料が減っても研究テーマは減らないあたり,なかなか料理研究家というのは因果な仕事のようです。
※次回の掲載は2026年11月28日を予定しています































