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「フラメモ」は,ハローキティをはじめとするサンリオキャラクターに仕える「フラガリアの騎士」たちの物語を描くプロジェクトだ。ボイスドラマや楽曲,ライブなど幅広く展開されており,4Gamerでは以前,「ロストキティ編」の見どころを振り返る紹介記事も掲載している。
物語はついに世界の核心へ――「フラガリアメモリーズ」ボイスドラマ「ロストキティ編」完結間近! ここまでのストーリーを振り返る
サンリオが贈る騎士道ファンタジープロジェクト「フラガリアメモリーズ」のボイスドラマ「ロストキティ編」が,まもなく完結を迎える。本稿では,ハローキティたちを主とする騎士の物語「BOUQUET結成編」から「ロストキティ編」までのストーリーを振り返りつつ,注目ポイントを紹介する。
大切な“想い出”や忘れてしまった記憶を描いた同編で,ハルリットは大きく感情を揺さぶられていく。梶原さんは,ハルリットとハルリット・シャドウをどのように演じ分けたのか。1人2役ならではの収録の難しさや,キャラクターの心情に寄り添った役作り,楽曲に込めた思いを聞いたほか,プロデューサーの村上一馬氏にも,物語や楽曲について補足してもらった。
![]() 梶原岳人さん |
![]() ハルリット(CV:梶原岳人) |
ハルリットとハルリット・シャドウ
梶原さんが1人2役で演じた「光」と「影」
4Gamer:
ついに「ロストキティ編」が完結しましたね。まずは,最初に台本を読まれたときの気持ちからお聞かせください。
ハルリット役/梶原岳人さん(以下,梶原さん):
「BOUQUET(ブーケ)結成編」と比べて,かなり毛色の違うストーリーになっていて驚きました。「ロストキティ」というタイトルですが,ハルリットにとってキティ様は,生きるうえでの主軸なんですよね。それが崩れていく話なので,彼の人生そのものが揺さぶられてしまうというか。読んでいて,「ハルリットは大丈夫か……?」と思いました。ただ,実際に演じてみないと,どうなるかは自分でも分からないとも感じましたね。
4Gamer:
本作では,ハルリット・シャドウの存在も大きかったですよね。
梶原さん:
そうですね。登場したときはかなり驚きましたし……ハルリットもハルリット・シャドウ(以下,シャドウ)も僕が演じるので,どう演じ分けようかなと。シャドウは,いろいろな解釈ができる存在なんですよね。最後の話を読むまで,彼がいったい何を考え,何を目的に動いているのか,僕にも視聴者の方と同じように分からない状態でした。
ハルリットをはじめとする“成長していくキャラクター”とは違い,目的があって登場した人物だと思うので,その最終地点を自分の中に持ったうえで演じたいと思いました。
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4Gamer:
シャドウについては,村上さんやスタッフの方から説明を受けたのでしょうか。
プロデューサー/村上氏(以下,村上氏):
はい。まずは私やシナリオ制作チームのメンバーから,彼の立ち位置や「なぜ現れたのか」「なぜハルリットのそばにいるのか」ということをお伝えし,演技に落とし込んでいただきました。
4Gamer:
そうだったんですね。梶原さんとしては,台本を読んだときに最も大きなインパクトを受けたのは,シャドウの登場でしたか。
梶原さん:
いえ,僕としては「キティ様がいなくなること」のほうが大きかった気がします。シャドウにも驚きはしたんですが,なんていうんだろう……これまでハルリットを演じてきた中で,意外な存在ではなかったというか。きっとハルリットの中にも“そういう側面”や,人に見せたことのない一面はあるんだろうなと感じていたからかもしれません。
そういう意味で,納得感はあったんですよ。だから,彼が生きる理由であるキティ様がいなくなることのほうが,インパクトはありましたね。
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4Gamer:
なるほど。少し前の話にはなりますが,収録を終えたときはどう感じられましたか。
梶原さん:
まずは「とても重かったな」と。ストーリーもそうですが,演じる側としても,想像力を働かせるのにカロリーを使いましたし,エネルギーが必要だったんです。ただ,込めたものが多くて大変だったぶん,終わったときには達成感がありましたね。
あと,収録は1人で行うことが多かったんですよ。RED BOUQUET(レッドブーケ)以外のメンバーと絡む場面も増えて,その大変さもありましたが,何より1人で2役を演じるのが初めてで。通常なら,1つの話を収録するときは,そのキャラクターになって順に演じれば終わるところを,今回は別のキャラクターとして同じ物語をもう一度演じる難しさがありました。
とくにシャドウには,ハルリットとは別軸の感情や感覚があるイメージで……。実は僕,オーディションなどで複数の役を受けるとき,決められた時間の中で切り替えるのがすごく苦手なんですよ(笑)。
4Gamer:
そうなんですね! 1つの役にのめり込むタイプなのでしょうか。
梶原さん:
コメディならまだいけるんですが,今回はそうではなかったので……。やはり,うわべだけでなんとなく演じたくはなかったんです。内側の深い部分まで表現したかったので,そこがかなりハードでした。
まずはハルリットのセリフを録り,それからシャドウを録る。改めて聴いて「違うな」と感じたら,またハルリットからやり直す,という過程を繰り返しました。
4Gamer:
それは……大変そうですね。
梶原さん:
自分と自分の掛け合いではありますが,ハルリットを収録したら,それはもう自分ではないものとしてシャドウを演じていきました。でも,そうしていくとハルリットも変化するんですよ。すると,今度はシャドウが変わる。
僕だけでなく,聴いてくださっているスタッフさんたちからも,「シャドウがこう変わってきたので,今度はハルリットをこう演じてみてください」といったディレクションをいただきました。僕の視点に加えて,ディレクションしてくださる皆さんの感じ方もあるので,すごく時間がかかりましたね。
4Gamer:
これまでに経験したことのない収録だったということですね。村上さんは,梶原さんが演じるハルリットやシャドウを聴いて,いかがでしたか。
村上氏:
序盤のシャドウは怪しげで,悪さをするんじゃないかとも思われそうなキャラクターですが,実際はそうではなく,ハルリットが抱えきれない感情を引き受けてくれるような存在です。そのニュアンスをどう表現されるのかと思っていましたが,いい具合に“温度のない”声だったなと。
冷たいとまではいかないのですが,平熱が低そうな感じといいますか……。ミステリアスで,彼のキャラクター性がうまく表現されていたと感じました。
4Gamer:
とてもよく分かります。
梶原さん:
僕はどちらかというと,演技に感情が乗ってしまうタイプなんですよ。ハルリットはその極限と言えるキャラクターで,だからこそ演じやすいんです。でも,シャドウは真逆なんですよね。自分の中の感情や温度をどんどん消していくというか……。
さらに,目的が分からず,それを見せてもいけない存在だったので,そうした部分では苦労しましたね。
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村上氏:
まさに,そういう声が欲しかったんですよ。
梶原さん:
現場でも,そうしたディレクションがありました。シャドウの意図は見せない。ただし,完全に悪い人物にも見せない,というものでした。そのバランスをしっかり調整しました。
4Gamer:
あの声からも,そうした意図が伝わってきました。一方のハルリットは,「ロストキティ編」の序盤からラストまで,内面が大きく動き,変化していきましたよね。演じるうえで意識したことはありましたか。
梶原さん:
僕の中のハルリットは,みんなが落ち込んでいたら引っ張り上げてくれる,希望の象徴のような存在です。それは,彼自身の人間性や心が自然とそうさせているんだと思います。
ところが「ロストキティ編」では,彼の中の希望が打ち砕かれ,絶望に飲まれてしまう。その芝居については,落ちるところまで落ちていいと言ってもらっていました。それだけのことが起きたのだから,と。
4Gamer:
そうですよね。
梶原さん:
すごく高いところから一番低いところまで落ち,周りのみんなに助けてもらいながら這い上がっていく。かなりの落差があり,自分の中で削られるものも多かったので,演じていてしんどかったです。でも,最後に救いがあったことは,僕自身にとっても救いになりました。
4Gamer:
通常の収録でも,一度録ったものを聴き直して「やはりもう一度やりたい」と録り直す方は多いですし,それが1人2役となれば,なおさらですよね。
梶原さん:
はい。あと今回は,キティ様との会話も印象的でしたね。登場する場面は限られていますが,最後のほうでは,これまでで一番多く言葉を交わしたと思います。その部分を収録するとき,スタッフさんに「重いシーンを全部録りきってから臨みたい」とお願いしたんですよ。
それで,ハルリットとシャドウのハードなシーンをすべて録り終えてから,キティ様の言葉を聴いたんです。そのおかげで,自分の中で失っていたものを取り戻したような感覚で,収録を終えられました。
4Gamer:
まさに,ハルリットの心情とシンクロできたわけですね。すてきなお話です。
梶原さん:
これまでにも,ハルリットに関しては「主(ロード)への愛を込めてください」といったディレクションがありましたが,今回はさらにブーストがかかりました。より実感を持って収録できたので,このうえないエンディングになったんじゃないかなと思います。
ハルリットの歩みが導いた
「ロストキティ編」のメッセージ
4Gamer:
ボイスドラマは基本的に1人で収録することも多いと思いますが,1人で録る場合と,実際に掛け合いながら録る場合とでは,やはり感覚はまったく違いますか。
梶原さん:
それはすごくあります。台本を読み込んで臨んでも,結局,自分が想像できる範囲を超えないんですよね。それが無意識のうちに打算的になるところもあり,葛藤しました。
今回は他人同士が演じる2つの役ではなく,本当の意味で「同じ人間から生まれた2つの役」だったので,1人で演じることにも意味があったのかもしれません。
逆に,ほかの人が演じるものには,自分にない要素しかないんですよ。日常生活でもそうですが,生きていく中で想像しなかったことや,知らない気持ちに出会うことで,自分の心も動かされていくのだと思います。
村上氏:
今回,梶原さんはほぼ1人での収録だったうえ,収録順もかなり早かったので,ほかの方のセリフをあまり聴けなかったんですよね。だから「ロストキティ編」に関しては,ハルリットの声を中心に,ほかのキャラクターとの会話の雰囲気を作っていきました。
4Gamer:
そうだったんですね。ちなみに,セリフ数としては,やはりハルリットが一番多かったのでしょうか。
村上氏:
数えてはいないのですが,そうかもしれませんね。しかもシャドウがいるので,梶原さんの稼働が一番多く,大変だったと思います。
梶原さん:
ハルリットは,フラガリアとして就任したころはまだ未熟な部分が多く,成長の振り幅がすごく大きかったですよね。だからこそ,自分の中の葛藤がシャドウとして生まれたのかなと,演じながら感じていました。
そうしたことは僕たちにも起こりうるものですし,きっと多くの人が通ってきた道を,ハルリットもたどったのだと思います。
彼は,フラガリアとしてキティ様のそばに立つために,不安や憎しみといった醜い感情は「あってはいけないものだ」と思っていました。でも,シャドウとの最後のやりとりは,見てくださる方にとっても,共感しやすいものになったのではないでしょうか。シャドウの「それでいい,進め」というセリフも,すごく腑に落ちる言葉だったと思います。
4Gamer:
「ロストキティ編」の中でも,とても印象に残る言葉ですよね。
梶原さん:
はい。あの,僕から村上さんにお聞きしたいのですが……シャドウが現れた理由が明らかになり,最後はハルリットとも分かり合うじゃないですか。
先ほどもお話ししたとおり,これは誰の人生にもありそうな感覚だと思うのですが,視聴者の皆さんに伝えたいメッセージも込められていたのでしょうか。
村上氏:
そうですね。シャドウが導いた結論こそ,まさに「ロストキティ編」で伝えたかった大きなメッセージです。本作は「フラガリアメモリーズ」という名前のとおり,“想い出”をモチーフにしたプロジェクトです。
小さいころ,ハローキティをはじめとするサンリオキャラクターのぬいぐるみなどのグッズを大切にしてくださっていた方は,たくさんいらっしゃると思います。ただ,この作品で伝えたいのは「良い想い出を大切にしよう」ということではなく,良いことも悪いことも含めて,すべてが想い出だということなんです。
サンリオキャラクターは,皆さんとその想い出のそばにずっといる存在であり,そのすべてが今につながっている。シャドウが導いた,「苦い記憶も含めて今の自分がある」というメッセージですね。
梶原さん:
ああ,めちゃくちゃいいですね。僕も本当にそのとおりだと思います。そういう気持ちの整理って,すごく難しいじゃないですか。苦い想い出は,ずっと嫌なものとして残ってしまうこともあります。
でも,それも含めて今の自分を作ってきたものなんですよね。悪いと思っていた出来事も,捉え方を変えれば前向きに受け止められる。それが幸せにつながるのかなと思ったりもします。視聴者の方にも,自分に置き換えて見てもらえたらいいな……。
村上氏:
たとえば,昔ハルリットが割ってしまったティーカップのシーンを見て,「自分にもこういうことがあったな」と,それぞれの記憶と結びつくことがあるかもしれません。
あのエピソードには,カップを割ってしまったハルリットの後悔がありましたが,それを丸ごと包み込んでくれたハローキティの愛情もありました。それが今と地続きになっていると分かることで,見てくださる皆さんの想い出ともつながってくれたら嬉しいですね。
梶原さん:
そうですよね。生まれたときからサンリオキャラクターが身近にいる人はたくさんいて,小さいころからそばにいてくれた存在を,何度引っ越しても持っていったり,大人になってからも身につけたりします。
皆さんの生活に根付いた存在だからこそ,「フラメモ」は,そうしたメッセージも受け取りやすいコンテンツなのだと思います。
村上氏:
「ロストキティ編」のラストのほうは,スタッフみんなで,収録した音声を聴きながら嗚咽を漏らしてチェックしました……(笑)。
「フラメモ」の物語を彩る楽曲
そこに込められた思いとは
4Gamer:
では,楽曲について伺います。まずは,ハルリット・シャドウの世界観を表現した「NEVER CRED」について教えてください。
梶原さん:
これまでもフラガリアたちのソロバージョン曲はありましたが,これは初のソロ曲と言っていいですよね。もともと「シャドウの曲があります」とは聞いていたんですよ。
ただ,ボイスドラマを見ている人にとっては,この歌が公開される時点でも,まだ彼の目的が分からない状況でした。そこで,彼のどの部分を切り取ろうかと考えたんです。
それで,これまでハルリットとして歌ってきた曲とは真逆にしようと思いました。「EVER RED」と対になる曲ですし,これまで豊かに表現してきたさまざまな感情や感覚を,できるだけ削ぎ落としていく作業をしました。とくに冒頭は,温度感を消すことを意識しましたね。
4Gamer:
ボイスドラマでの芝居と同じ方向性だったということですよね。
梶原さん:
そうですね。そこから,少しずつにじみ出る感情を足していきました。歌詞の最後のほうには「時が経ち傷が癒えても」というフレーズがありますが,それは最終的にハルリットがたどり着いた結論でもあります。
マイナスだと思っていたことは,決してマイナスではなく,それもまた自分の一部であることが「結び目」という言葉で表現されているのかなと。
たしか僕,生配信(フラガリア情報局#23)のときに「ここがヒントなので聴いてください」と言ったような気がします(笑)。そうしたメッセージを,ぜひ皆さんにもくみ取ってほしいと思いました。
4Gamer:
ありがとうございます。では,「ロストキティ編」のエンディングテーマ「この願い葉となり、どうか」についても伺います。まずは村上さんから,この楽曲についてお聞かせください。
村上氏:
この曲は,ALL BOUQUETの楽曲としては,プロジェクトにとって2曲目にあたる楽曲で,「ロストキティ編」の「想い出は,美しく長く続いてくれるものだけではなく,ときには忘れてしまうものもある。でも,忘れることで前に進めることもあるだろう」というメッセージを強く含んでいます。
このプロジェクト全体のテーマを包括するような楽曲で,そういう意味では,ほかの曲と少し毛色が違うと言えるかもしれません。
全体的にはBLUE BOUQUETの色がやや強く,テンポ感はありつつも落ち着きがあり,エンディングにふさわしいスケール感を備えた楽曲だと思います。
「ロストキティ編」Part1,Part2,Part3ではアレンジの異なる各BOUQEUTバージョンが流れましたが,その3つのバージョンで使われている楽器が重なって,このALL BOUQUETバージョンとなっています。
3つのBOUQUETが集まって,大きな1つの花束になるイメージで構成しました。
4Gamer:
とてもドラマチックな曲ですよね。
村上氏:
大人っぽさもありますよね。「ロストキティ編」で最初に公開した「Moment Horizon」は,もう少し抽象的な世界観でした。
今回の「この願い葉となり、どうか」のほうが,より等身大の人間味がありますね。
梶原さん:
なるほど……。たしかに,人によって感じ方は変わると思いますが,「この願い葉となり、どうか」は,より身近な存在への愛を歌っていますよね。
先ほど村上さんがおっしゃったメッセージもありますが,皆さんにとって大切な存在や感情と重ねて聴いてもらえたら嬉しいです。
村上氏:
オープニング曲には,「これから“想い出”をモチーフにしたファンタジーが始まる」と想起させる期待感があります。一方,エンディング曲は,ボイスドラマでつづられた物語とセットで聴くことで,自分の人生と重ねていただけるかもしれませんね。
4Gamer:
楽曲を聴き,物語を知ることで,ボイスドラマ全体のテーマがより深く伝わってきます。自分の中で言葉にできなかった気持ちや想い出にも,気づけるかもしれません。ボイスドラマを楽しんだあとは,楽曲もじっくり聴いてみてください。
それでは最後に,読者に向けてメッセージをお願いします。
梶原さん:
これまで,ストーリーについてじっくり語れる機会はあまりなかったので,こうしてインタビューでいろいろとお話しできて嬉しいです。
僕自身がキャラクターとして込めたメッセージもありますが,実際にボイスドラマを聴いてくださる方それぞれに,受け取り方があると思います。
「フラガリアメモリーズ」の物語としてはもちろん,作中でシャドウが言った言葉や,ハルリットが受け入れた感情を,皆さんご自身と重ねてみてほしいです。僕にとっても,とても演じがいのある作品でした。ぜひ,たくさんの方に楽しんでいただけたら嬉しいです。
4Gamer:
本日はありがとうございました!
――2026年7月14日収録


















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