このタイトルを初めて目にした人は,おそらく3秒くらい固まるだろう。
まず,“70年代風”をわざわざタイトルに入れているあたりで,「ん?」となる。さらに,ゲームなのにロボットアニメと言い切っているあたりも様子がおかしい。極めつけは,謎すぎるゲッP-Xという名称。「ターがピーになってるからセーフ?」と,ちょっと不安になってくる絶妙なネーミングだ。
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作品の背景を知らない世代からすれば,“地雷っぽさ”を感じてしまうのも無理はない。出自の怪しい作品か,ネタ枠の作品なのではないか――少なくとも私はそう思っていた。
ところがどっこい! ゲッP-Xの出自を調べてみると,その印象が根底から覆った。そりゃあもうガラッと。
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本作のオリジナル版は,1999年にPlayStation向けの2Dシューティングゲームとしてアローマから発売された。“70年代風ロボットアニメ”というタイトルのとおり,ロボットアニメを真正面からモチーフにした作品である。
作中のアニメは手描き原画8000枚にものぼり,超がつくほどの有名声優を起用したキャラクター音声はフルボイス仕様。異常とも言えるこだわりの結果,データ容量が膨れ上がり,シューティングゲームらしからぬディスク4枚組で発売された異例の一作だ。
あえて言おう,ゲッP-Xはネタで作られたゲームではないと。限界突破した情熱で作られた怪作であると。そこまで言われると気になってこないだろうか? 怪作と呼ばれるゲッP-Xの全貌が。
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私は気になって仕方がなかった。70年代を知らず,ロボットアニメ黄金期の作品は「スーパーロボット大戦」シリーズで後追いした程度の人間だが,それでも気になってしまった。なんならサントラを買うくらい好きになっている。
これは,どストライク世代ではない人間がゲッP-Xに魅せられた話だ。どうか最後までお付き合いいただきたい。
このゲーム,すっごいから。
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もはや,やりすぎが通常運転。ここがすごいよゲッP-X
本作の何が凄まじいかと言えば,最高のロボットアニメを作るという一点に情熱とこだわりを注ぎ込んでいること。これに尽きる。まずはゲームの概要をさらっと見つつ,そのこだわりを語らせてほしい。
物語の舞台は197X年の地球。突如襲来した宇宙悪魔帝国率いる悪の軍団に対抗すべく,戦闘用巨大ロボットに若き3人のパイロットが搭乗する。この巨大ロボットこそが,物語の中心となるゲッP-Xだ。
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ファルコン号,シャーク号,パンサー号の3機が合体してゲッP-Xとなり,フォームチェンジによって異なる性質を発揮する。
とある事情により物語の後半でゲッP-XXに乗り換えるなど,ロボットアニメのフォーマットをまっすぐに踏襲しているのが特徴だ。
国民的ロボットアニメへのリスペクトが強すぎて心配になるかもしれないが,どうか安心してほしい。ゲッP-Xはダイナミックプロから正式な許諾を得ているうえに,青島文化教材社からの協力も受けている作品だからだ。
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じゃあ,では情熱とこだわりはどこに表れているのか。ここからが本題だ。
まず,起用キャスト。
巷では「豪華声優陣を起用!」というセールス文言をよく耳にするが,本作には豪華声優陣の一言で安易に片づけてはならないほどのレジェンドたちが集っている。
例えば,主人公のパイロット3人を演じるのは,神谷 明さん,速水 奨さん,たてかべ和也さん。ナレーター兼博士役には永井一郎さん,敵幹部の仮面の男には池田秀一さん,ラスボスには納谷悟朗さんが起用されている。
誰もかれもが,70〜90年代の国民的アニメで花形を飾る名優たちであり,当時でなければ実現が難しい最強のキャスティングといっても過言ではない。
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次いで挙げたいのが,参加アーティストの豪華さだ。
主題歌とエンディングは,ささきいさおさんが担当し,挿入歌は串田アキラさん,影山ヒロノブさん,MIO(MIQ)さん,ムッシュ吉崎さん(クリスタルキング)らが歌唱している。恐ろしいことにアニソン黄金期を支えたレジェンドしかいないのだ。
さらにおかしいのが,ステージごとに挿入歌が用意されている点だ。インストゥルメンタルではなく,8ステージすべてにボーカル曲が用意されており,挿入歌だけでその数は11曲にものぼる。あえて書いておくが,普通のシューティングゲームはここまでやらない。
しかも困ったことに,曲がとにかくいい。歌い手の声がいいだけでなく,ロボットもののツボを押さえた歌詞とメロディラインは耳なじみがよく,なぜか懐かしい気持ちにさせられる。
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このあたりで薄々分かってきたことだろう。本作がロボットアニメへの異常なまでの愛(こだわり)によって作られたことを。
キャスト,アーティスト,アニメ制作スタッフ,そのすべてに100%中の100%をつぎ込んだ“やりすぎフルコース”。ゲッP-Xはゲームでありながら,架空の“ロボットアニメ”を全力で形にした怪作なのである。
普通のシューティングゲーム?
否! これは“遊ぶ”アニメ番組だ
と,ここまで読んで「中身は結局シューティングなんでしょ?」と思う人がいるかもしれない。それは半分正解で,半分間違っている。
ゲッP-Xは,たしかに横スクロールシューティングゲームではある。プレイヤーはゲッP-Xを操作し,状況に応じて3形態を切り替えながら宇宙ビーストの群れを撃ち破っていく王道のプレイスタイル。
アーマー(体力)+残機制となっており,メイン,サブウェポン,ボンバー技を駆使して敵を撃墜していく,いわゆる普通のシューティングを楽しめる。しかしながら,本作の真髄はそこではない。
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ゲッP-Xが伝説の怪作たる所以は,その特異なステージ構造にある。1ステージがそのままテレビアニメの1話分として構成されており,シューティングはその中の1つのパートという立ち位置だ。
【時報→オープニング → 本編Aパート → アイキャッチ → CM → 本編Bパート → エンディング → 次回予告】の流れでゲームが進行し,そのさまはまさにアニメ番組そのもの。
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大事なことなので,もう一度書いておこう。ボス戦のあとにCMが入る。すごくアニメ番組っぽい。
そして驚くべきは,このすべてが本作のために制作されたオリジナルCMというこだわりよう。
その内容は,主人公機の超合金おもちゃに雑誌,シャンプー,ドレッシングと,当時のCMのノリが再現されている。
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ちなみに,「デラックスX合金 エックス1号」のCMは実写映像であり,映像内のおもちゃは海洋堂によって造形された実物だという。なぜそこまでこだわった!? と,ツッコまずにはいられない。
この時報から次回予告までの流れは1話だけ,なんてことはなく8ステージすべてこのスタイルで進行する。
そのためか,シューティングゲームを遊んでいるというよりも,全8話のアニメを一気見しているような感覚だ。
そう,本作は“アニメ番組を遊ぶゲーム”なのである。
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そして高解像度リマスター版で蘇るゲッP-X
高解像度リマスター版としてリリースされるとなれば,気になるのはその仕上がりだろう。
オリジナル版では15fpsで収録されていた作中アニメーションは,当時のベータカムテープから再デジタル化が行われている。超解像処理で高精細化し,本来の作画指定であった24fpsで復元されたこだわりの仕様だ。
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もちろん,ゲーム部分のアップデートも抜かりない。巻き戻し機能,連射機能,クイックセーブ,オリジナル版ムービーとの比較が可能なムービー切り替え機能,走査線を再現したブラウン管モードなど,昨今のレトロゲーム復刻において求められる便利な機能が網羅されている。
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70年代を知らなくても刺さってしまう魂の一本
本作に触れてみて,ひとつ思ったことがある。「70年代風ロボットアニメ ゲッP-X」は,70年代を直接知らない人間にも当然のように刺さる,ということだ。
70年代をリアルタイムで経験した層にとっての本作は,「あの頃の熱量を再現してくれた作品」として響くのだろう。それは間違いなく,ひとつの大きな価値だ。
だが,後追いでしか知らない人間にとっては,また少し違う見え方になる。
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「マジンガーZ」や「ゲッターロボ」の存在は知っている。あの時代のロボットアニメに,何かとんでもないエネルギーが詰まっていたらしい,というのも分かっている。
だがそれは,あくまで後追いで得た知識にすぎず,それを自分の体験として持っているわけではない。
ところが本作をプレイしていると,ロボットアニメ黄金期の熱が疑似体験的に迫ってくる。
プレイを終える頃には,当時に何が起きていたのか,そのときの子供たちが何に夢中になっていたのか,その一端がなんとなく分かったような気がしてくるのだ。
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時報から始まる濃厚なサイクルを摂取し続けると,ゲッP-Xというアニメがテレビで放映されていたような気になってくるし,なんなら,いつのまにか好きになっている。
あげくの果てには,「とんでもないゲームがあるんだけどさ……」と誰かに語りたくて仕方がなくなるのである。
そういう体験ができるゲームは,なかなかない。
だからこそ,蘇ったこの愛すべき怪作を遊び,その目に焼き付けてほしい。
この作品をきっと,君も好きになってしまうから。
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