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「Twitch」がもたらすのは“経験の共有”という魔法。CEOのダン・クランシー氏が語るコミュニティ,そして変わらない人間の欲求とは[TGS2026]
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印刷2026/09/18 01:48

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「Twitch」がもたらすのは“経験の共有”という魔法。CEOのダン・クランシー氏が語るコミュニティ,そして変わらない人間の欲求とは[TGS2026]

 ゲーム配信というエンタメが日常化した昨今。今やその受け手はコアなゲーマーだけでなく,「ゲームはプレイしないがゲームのストリーミングは見る」というような層まで生まれており,日本国内の市場は一昔前と比べて大きな成長を遂げている。そんな環境のなか,近年ますます知名度を上げ,勢いを増しているのが「Twitch」だ。

Twitch CEO ダン・クランシー(Dan Clancy)氏
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 Twitchの原型は,ジャスティン・カン(Justin Kan)氏やエメット・シア(Emmett Shear)氏らが,カン氏の生活を24時間配信するストリーミング技術「Justin.tv」を2007年に開発したことにある。もともとはゲーム配信専門のプラットフォームではなく,一般公開後,とくに人気の高まったゲーム配信が分離されて生まれたのがTwitchというわけだ。

 Amazonに買収されたのは2014年と,意外と最近(?)で,Amazon Prime会員特典のひとつである「Prime Gaming」で馴染みがある読者も多いだろう。

 そんなTwitchの現CEOがダン・クランシー(Dan Clancy)氏だ。氏はNASA,Google,Nextdoorを経て,2019年にTwitchのクリエイター&コミュニティ部門を統括する上級幹部として招聘され,2023年からCEOを務めている。
 今回クランシー氏は,東京ゲームショウ2026に合わせて来日。初日となる9月17日,Twitchに関する基調講演をメインステージで行った。本稿ではその内容をお伝えしよう。

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巨大プラットフォーム「Twitch」の立ち位置とは


 クランシー氏は「Twitch CEOのダン・クランシーです。東京ゲームショウ2026に参加できてとても嬉しく思います」という挨拶から基調講演を始め,改めてTwitchの概要を述べた。

 一般的に,ゲーム配信プラットフォーム(サイト・アプリ)と捉えられがちなTwitchだが,クランシー氏によれば「Twitchはコミュニティを主体とする,ライブストリーミング・エンタテインメントプラットフォーム」であるという。出自どおり,ゲームコンテンツが中心であり続けるだろうと述べつつも,「Twitchの基盤は何よりもストリーマーの存在にある」と語った。

 Twitchのストリーマーが視聴者とコミュニティを築く一方で,昨今の多くのソーシャルネットワーキングサービスは名に反し,孤立を生みやすい(アンチソーシャル)とも付け加えた。
 多く見受けられるスワイプで次々に対象を切り替えられるシステムは,ほかの人との新たな関わりにつながりにくいという。結果として,コミュニティの一員という帰属意識も生まれないとクランシー氏は語る。

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 そのうえで,人間は他人とのつながりを自然と求めるものであり,もっとも深いつながりは,フィルタリングされていないリアルタイムの相互作用を通じて生まれると指摘。

 Twitchのデザインを「人々が椅子を引き寄せて腰を落ち着けるようなもの」と表現した。視聴者は最初こそ単なるファンだが,時間が経つにつれてほかの人々を認識してチャットするようになり,コミュニティの一員として交流を始めていく。だからこそ,Twitchは「コミュニティファースト」のプラットフォームであり,“経験の共有”こそ,Twitchがもたらす魔法なのだと述べた。

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 ちなみに,現在Twitchユーザーの平均滞在時間は72分だそうだ。この数字が長いのか短いのか,いまいちピンとこないが,冷静に1日当たりの人間の可処分時間を考えるとかなり長いともとれる。実際,ほかのライブストリーミングプラットフォームでは,ライブストリームの視聴が72秒未満で終わることも頻繁にあるのだという。

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 ここでクランシー氏は,Twitchが実施した日本のZ世代視聴者500人を対象とした調査を話題に挙げた。それによると,若い世代はオンデマンドコンテンツよりもライブ配信を好む傾向があるという。利便性やタイムパフォーマンスよりも,リアルタイムでのつながり,共感,そして同じ瞬間を共有する体験を重視しているためだと氏は述べる。

 そしてこうして育まれたコミュニティは,次第に独自の文化を形成し始めていく。実際に,Twitchを利用する人の3分の2が「Twitchではありのままの自分でいられる」と回答しており,Twitchをほかのソーシャルメディアプラットフォームと比較した場合,2倍以上のユーザーが「よりありのままの自分で過ごせる」と回答した結果もあるのだそう。

 クランシー氏は自身がお気に入りだというコミュニティの一例を紹介し,「こうした出来事は,ゆっくりと滞在できるサービスから生まれるものです。だからこそクリエイターとコミュニティはTwitchの基盤なのです」と語った。そして,ショート動画で知られるTikTokを例に挙げ,「新たな発見には最適だが,深いつながりを築くには向かない」とも述べる。

 「ライブストリーミングへの関心の高まりは,クリエイターと視聴者とのより深いつながりによって生まれ,さらに記憶に残る瞬間がコミュニティを興奮させます。そしてTwitchに限らず,広大なインターネットへ広がっていきます」と,マライア・キャリーさんが息子のモロッカンさんの配信に映り込んだ例に言及した。

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 このクリップは瞬く間に拡散されたが,これは単に有名人が配信に映り込んだからではなく,予想外の展開に感情が動かされ,共感を得たからこそ注目を集めたのだとクランシー氏は語った。

 また,日本のストリーマーの一例として,「VRChat」におけるスタンミじゃぱんさんと所場さんによる交流も紹介された。かのTwitchのCEOが,非常に真面目な顔で「あっち向いてほいをするスタンミさんと所場さん」をバックに語っていたことがすでに興味深い。面白く記憶に残る出来事が起きた際,そこにコミュニティが存在し,Twitchならではの反応が起こることで,その後ほかのソーシャルプラットフォームでも多くの支持を集めた経緯が紹介された。コミュニティはTwitchで生まれ,育ち,その影響はプラットフォームの外へと広がっていくのだ。

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 冒頭でも述べたとおり,Twitchの成り立ちはゲーム配信であり,その成長もゲームを中心とするコミュニティの上に構築されてきた。友人とソファに座って一緒にゲームをする。行き詰まったら別のプレイヤーに助けを求める。物語に夢中になれば,その体験について誰かと語り合いたくなる。
 Twitchは,こうしたもともとゲームのなかにあった自然なコミュニケーションをオンラインに広げ,より大きなスケールで共有できる場にしたわけだ。

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 しかし,今やTwitchはゲーマーだけのものではない。「ゲーマーはスポーツの話,音楽の話,とにかくなんでも聞くのが好きですよね」と氏は説明する。

 結果,ミュージシャンはライブでトラックを制作してコミュニティのために公開し,アスリートたちはファンとつながるためにストリーミングを活用する。クランシー氏は,ラッパーのkamuiさんと,TikTokerのポーザー白石さんが主宰するTwitch発のコンテンツ「ラフスタ」を挙げ,ヒップホップ文化とゲームの融合の一例として紹介した。
 また,これがサイバーエージェントCEOの藤田 晋氏の目に留まり,Abemaで展開中の「Kamui’s HYPE THE HOPE」につながった事例についても言及していた。

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Twitchがゲーム業界で果たす役割とは


 Twitchにおいて効果的に反響や話題を得られるゲームは,「ストリーマーと視聴者双方が反応でき,共通の話題を作れるもの」だという。クランシー氏は,最近の例として「めっちゃカメレオン」を挙げていたが,これは「視聴者に,対戦に参加しているような感触を覚えさせ,実際に遊んでいるかのような楽しさを感じさせた」のだという。

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 「デベロッパとパブリッシャにとって,ゲームのプレイヤーはもっとも重要な財産です」とも語る。Twitchはコミュニティを盛り上げるための施策やツールで,パブリッシャやデベロッパをサポートするとの姿勢を明確にした。
 実際の取り組みとして,「ELDEN RING NIGHTREIGN」のローンチ初期,拡張機能を導入したストリーマーのデス数をカウントする「Twitchグローバルデスカウンター」をバンダイナムコエンターテインメントと協力して行ったことを挙げた。

 また,「コミュニティへの参加を促す瞬間を作らなければなりません」としたうえで,The Pokémon Company Internationalと提携し,ポケモンワールドチャンピオンシップス2026で,視聴者がポケモンのチャットバッジを集められるシステムを提供したことも紹介していた。

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 続いてクランシー氏が述べたのは,「コミュニティに主導権を」というワードだ。ゲーム文化は,反応,感情,経験で構成されていると定義したうえで,リアルタイムでコミュニティに主導権を握らせることで,反応を早期かつ頻繁に呼び起こすことができるという。

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 Twitchに備わるDrops(ドロップス)やExtensions(エクステンション)といったツールを組み合わせることで,パブリッシャや開発者は,ゲームの瞬間を設計できるようになる。
 視聴者をプレイヤーへとつなぎ,離れていたユーザーを再び呼び戻す仕組みを作れるのだという。それは,コミュニティにとって価値があるだけでなく,開発者やパブリッシャにとっても大きな成果につながる。

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 eスポーツタイトルの素晴らしい例として,クランシー氏はRiot Gamesの「VALORANT」を挙げていた。「VALORANT」はクローズドβテスト時,一部のユーザーのみがプレイ可能な状態でスタートし,それらのプレイヤーのストリーミングを視聴すると,Twitch Dropsから参加権を得られる可能性があるという仕組みを採用していた。
 正式リリース前からプレイヤーにゲームを理解してもらうことが重要だと考えたゆえの施策だが,そうした始まりから6年後,「VALORANT」のコミュニティは成長し,世界中に強力なファンダムを築き上げている。

 VALORANT Champions2025では4758万時間の視聴を記録したが,そのうち58.4%は公式配信ではなく,配信者による同時ミラー配信から生まれたものだったそうだ。つまり,プレイヤーはお気に入りの配信者を通じて大会を体験し,それぞれのコミュニティや視点,文化とともにイベントを楽しんでいたことになる。

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 ブランド企業との連携にも,既存のコミュニティの力を活用したマーケティングが有効だと解説された。「HyperX」がAmazonプライムデーで展開したマイク「QuadCast」のプロモーションでは,Twitchならではの機能を活用することで,大きな効果を発揮したそうだ。

 視聴者は自らが支援するストリーマーをサポートするブランドに好印象を抱く傾向にあり,80%のTwitchユーザーが「お気に入りのストリーマーをサポートするブランドを好意的に評価する」,48%のTwitchユーザーが「お気に入りのストリーマーが宣伝している製品を試してみたい」と回答したとの言も付け加えておこう。

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 「テクノロジーが進化しても,人が求める本質は変わりません。誰かと一緒に体験したい。その瞬間に反応したい。ゲームを作るにしても,ブランドを築くにしても,配信者として活動するにしても,人々が『自分もその一部だ』と感じられる体験を届けてください」と,クランシー氏は締めくくった。

 クランシー氏の講演後に行われたトークセッションには,先の話のなかで名が挙がったRiot GamesでHead of International Publishing & Esportsを務めるウェイレン・ロゼール(Whalen Rozelle)氏が登壇した。余談だが,ロゼール氏は「Justin.tv」時代からの古参Twitchユーザーなのだそうだ。

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 ロゼール氏は,コミュニティはRiot Gamesにとってすべての中心であり,プレイヤーが「ゲームをプレイしている」のではなく「このゲームのプレイヤーだ」とアイデンティティの一部になるまでプレイヤーの体験を引き上げることが,生涯にわたる関係性を築く方法だと解説した。そして,コミュニティこそが新たなプレイヤーを呼び,帰属意識を生むものと述べていた。

 Twitchについては,「単にストリーミングを見に行く場所ではなく,何かの一部,何かの瞬間のひとつになりに行く場所」と表現し,同時に「コミュニティはひとつのサービスに固執せず,さまざまなプラットフォームを自由に渡り歩いている」ともロゼール氏は語っていた。
 だが,プレイヤーにサービスを提供することが使命である以上,コミュニティの生態系を自社だけで完結させることはできないため,Twitchは重要なパートナーと述べている。

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 クリエイター(ストリーマー)については,「今日の放送局」と表現した。また,「VALORANT」は当初からミラー配信(コストリーミング)を積極的に活用しており,今では「VALORANT」eスポーツのファンの半数以上が,クリエイター経由で視聴しているという。クリエイターがハブとなって,コミュニティをつなぐ姿が語られた形だ。

 βテストでのアクセス権しかり,その後のミラー配信しかり,「VALORANT」の現在のファンダムに,Twitchが果たした役割は極めて大きいといえる。

 セッション終盤では,話題に上がることも多いAIについて語られるシーンもあった。ロゼール氏は「AIが何をもたらすか」よりも「AIが人類や文明にどのような影響を与えるか」に注目すべきとしたうえで,デジタル化が進むほど,人はよりリアルなコミュニケーションを求めるのではないかと見解を示した。
 そのうえで,AIには「人と人をつなげ,つながりを維持するための手助けをしてくれるツール」としての役割を望んでいたのが印象的だった。

 テクノロジーの進化はサービスの進化につながるが,人間の核心的なニーズは変わらない。時代がすさまじい速度で突き進むなか,変わらないものに対してどのように応えていくのか。実にさまざまなことを考えさせられたセッションだった。

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