少人数のチームで広大な世界を作り上げるために開発した数々のツールが,実演を交えて紹介された。
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ARC Raidersは2025年10月にリリースされたPvP方式の脱出型シューターで,これまでに約1600万本を売り上げる大ヒットとなった。同時にこの作品は,一種の“実験”でもあったという。すなわち,これほどの規模のゲームを,ごく少人数のチームで作れるかという挑戦だ。
ネクソン,2026年度第1四半期の連結業績を発表。「ARC Raiders」と「メイプルストーリー」が成長を牽引し,過去最高の売上収益と営業利益を達成
ネクソンは本日,2026年度第1四半期の連結業績を発表した。売上収益は1522億円,営業利益は582億円となり,いずれも過去最高額を達成した。同社の成長は「ARC Raiders」と「メイプルストーリー」フランチャイズが牽引しているという。
実際,ARC Raidersの3Dコンテンツは合計でおよそ20人によって作られた。それを可能にしたのが,アーティストが高速にコンテンツを作れるよう時間をかけて整備した“ツール”である。
Embark Studiosがゲームを作るうえでの明快なビジョンをもち「強力なツールに投資し,少人数の情熱あるチームが,プレイヤーに愛されるゲーム作りに集中できるようにする」と,Andersson氏が率いるWorld Content Teamは,2025年のリリース時点で15人だった。
その15人がゲームのほとんどの3Dコンテンツ(全レベル,敵の3Dモデル,武器,アイテム,コスメティック,メニューやUIの3D要素まで)を作り上げた。ローンチ後は8人を加え,現在はライブサービス向けのコンテンツを制作しているという。
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Embark Studiosで3Dコンテンツ制作に使う主要ツールはHoudiniとBlender,そしてゲーム本体はもちろんUnreal Engineだ。
3Dコンテンツ用のツールはすべてHoudini内に存在する。これは,プログラマーの手をあまり借りずにアーティスト自身がツールを作れるからであり,「アーティストのための最良のツールはアーティストが作る」という考えに基づく。多くのアーティストはBlenderだけで作業し,シンプルなものを作るだけで,ツールが自動的にゲームエンジンへ送れる形式に変換してくれることを目標にしている。
Embarkの3Dチームには,ゲームへの向き合い方で少し変わった点がある。少人数で素早く動くため,いわゆる“伝統的なアートディレクション”から離れたのだ。
伝統的なやり方では,アートディレクターやコンセプトアーティストが一枚絵を描き,それをレベルデザイナーやアーティストに渡して「これと同じ見た目にしてほしい」と伝える。だがARC Raidersでは,アートディレクター自身がBlenderで作業し,ゲームデザイナーやレベルデザイナーとともにコンセプトを直接3Dで構築する。こうして作られた3Dコンセプトは,最終的なゲームコンテンツへ非常に素早く変換できる。実演で示された例では,アートディレクターの作業は約1時間,最終アセットの制作はこのワークフローで約5時間だったという。
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ここからAndersson氏は,環境制作のためにツールを用意した4つの領域:ランドスケープ,自然(nature),プロップ/オブジェクト,建築を順に紹介した。
まずランドスケープ。レベルの地形には常に実世界のデータを用いる。実世界データは完璧なリアリズムが“タダで”得られる長所がある一方,高解像度データの入手が難しく(実質的に政府機関しか作れない),扱うソフトも高価で,アーティストにも高度な知識を要するという短所がある。
そこでEmbarkは,アーティストがGoogle Earthのような感覚で,使いたい地形を選べるシステム「Embark LiDAR Library」を構築した。
Houdini内でライブラリを開き,世界の任意の場所を選んで読み込むと,自前の“Google Earth”のようなものが手に入る。実演ではカナリア諸島テネリフェ島の火山を選択し,「高解像度の実データをくれ」と指定すると超高解像度データが得られた。
これをUnrealへ書き出すと,高さ・ジオメトリ情報に加え,美しい衛星カラー情報や,高解像度ゆえの精緻なマテリアルマスクまで得られ,地形のテクスチャリングに使える。
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2つめは自然(nature)ツールだ。自然コンテンツは,アーティストを実際に世界へ送り出し,フォトグラメトリ(写真から3Dモデルを生成)で作る。良い3Dモデルには通常200〜500枚の写真が要る。
直近の遠征では約12万枚を撮影したといい,これを効率よく3D化するためのツールが必要になった。最優先は岩の撮影で,次いで小物をスキャンしてランドスケープのマスクとともに世界を構築していく。
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ワークフローでは「RealityScan」というソフトに200〜500枚を入れて超高解像度モデルを作る。通常はそこから低ポリゴンモデルを作り,UV展開し,写真スキャンのディテールを転写する,という時間のかかる工程が必要だが,その時間はない。
そこで作ったのが「Scan to Asset」ツールだ。高解像度データをHoudiniに取り込むと,低ポリゴン化とUVマッピング,超高解像度からのテクスチャ生成までを自動で行う。実演では約100万ポリゴンのメッシュを,ボタン一つで約6000ポリゴンに,「少なすぎる」と感じれば1万2000ポリゴンに即座に変更(岩は通常1〜2万ポリゴン)。写真からボタン一つで,ゲームで使える岩アセットが手に入る。
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アセットができても,少人数では世界を組み立てる時間が乏しい。
そこで実世界データから作ったランドスケープマスクを使い,小さなオブジェクトの大半を自動配置する。大きなオブジェクトはデータシステムを使い,アーティストは一部を置くだけ。データオブジェクトは“円”として表示され,素早く配置できる。こうして数分で自然のシーンが組み上がる。実演のデモシーンは,書き出した地形に小物を自動配置し,大きな岩だけ置いてボタンを押すと残りが自動生成・配置される。この規模のシーンが約20分で作れるという。
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3つめは多数のオブジェクト制作で,ここでは「Asset Processor」というツールが使われる。アーティストがごく簡単なものを作ってボタンを押せば,完成したゲームアセットが得られるという思想で,4種類のアセットを生成できる。
1つめはシンプルなコンクリート形状の生成だ。グレーが作りたいオブジェクト,赤が「ここにダメージ(欠け)を作る」,黄色が「ここにはダメージを出さない」を表し,ボタンを押すとメッシュとダメージ表現,自動UV,きれいなエッジが生成される。
2つめは金属ディテールで,数秒で要素を足してボタンを押すと,使用するトリム/テクスチャシートへ自動マッピングされる(手作業のマッピングは一切なし)。
3つめはスプラインからのケーブルで,実体は安価な“見せかけの平面ジオメトリ”。種類を選んでボタンを押すだけで自動的にテクスチャリングされる。これらをすべて使った例が,ゲーム内の脱出用エレベーターだ。約2分でモデリングできるシンプルなコンクリートの土台に,大量の金属トリムのディテール(テクスチャマッピング不要)を載せ,ケーブルツールで装飾する。完成まで数時間しかかからないという。
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4つめは建築だ。前述のツール群で大半の建物を作るが,多数のオブジェクトを要する複雑な建物には「Building Creator」を使う。その前に,Houdini上の「Overgrowth」というツールも紹介された。
Unrealで建物を選んでHoudiniへ送り,植生を生やしたい場所を選んでボタンを押すと植生が生成され,枯れた植生の位置も自動でマッピングしてクールな見た目を作る。
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Building Creatorは,多数のオブジェクトが配置される複雑な建物を生成するツール。アーティストはBlenderでごく簡単な形を作ってHoudiniへ送るだけ。ツールはまず家の基礎を作り,アーティストが階数を決め,壁を生成し,屋根・窓・ドアを自動生成する。
各ステップは手動(窓を置きたい場所に箱を作るなど)に切り替えることもできる。だがこのツールの肝はモデリングではなく,“データソケット”の自動生成にある。名前付きのデータソケットを多数自動生成し(データベースに基づくセットドレッシング),その名前によってゲーム内でどのメッシュが出現するかが決まる。エンジンへ送れば自動でテクスチャマッピングされ,あとはボタンでメッシュ配置を生成。データソケットを足せば,建物のディテールを継続的に増やしていける。
まとめると,ARC Raidersのワールドコンテンツは「Blenderでごく簡単に作り,高度なHoudiniツールにすべての作業を任せ,エンジンへ送る」という流れで作られている。
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ここで登壇者がEva Dalberg氏へ交代し,キャラクター制作のツールとプロセスに話が移った。キャラクターチームもまた非常に小規模で,アートディレクションやコンセプトアートは他チームと共有し,専任のリソースを持たない(ローンチ後に規模はおよそ倍増)。何より,キャラクター制作は協働のプロセスだ。
企画段階からディレクターやプロデューサーと一緒に,まず大きなストーリーの節目をタイムラインに並べ,マップ公開やゲームプレイイベントといった“イベント”に分解し,その下にキャラクターアセットを当てはめていく。すでにあるアセット,作ると決めているもの,アイデア,ナラティブ由来のものなどだ。最後にプロダクションが,公開日に間に合わせる締め切りを割り出す。共有のMiroボードに進捗を並べ,簡単な色分けで「制作中/未着手/完成」を見分けているという。
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アイデア出しも協働だ。参照資料やコンセプトアートを集めた巨大なボードを共有する。専任のコンセプトアーティストは必ずしもいないが,作りたいキャラクターのコンセプトスケッチは数百枚あり,長年集めたアイデアや参照も並ぶ。チーム全体にも気になるものの投稿を呼びかける。
そこからキャラクターアーティストやアートディレクターがアイデアを選び,自分なりの解釈で作り始める。この段階でコンセプトアーティストは必ずしも関与しない。行き詰まったり,特定のデザインで助けが欲しいときだけコンセプトアーティストに依頼し(例として,変更点を素早く描き込んだペイントオーバー),アーティストはそのフィードバックを受けて自分で仕上げる。形式にとらわれない協働で,アーティスト個々の創造性を引き出すと同時に,詳細なコンセプトを待ったり硬直したレビュー工程で各段階ごとに待たされたりするボトルネックを避けられる。
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テクニカルアーティストであるDalberg氏の問いは「こうしたプロセスをツールでどう支えるか」だった。使うのは業界標準のツールで,車輪の再発明はしない方針だ。重視したのは,第一にコンテンツを“正しい文脈=ゲーム内”でレビューできること。アセットをゲームに入れる書き出し工程を最終ステップにせず,早い段階で到達できるようにする。
第二に,コンテンツの見直しや変更が大仕事にならないこと(最終調整のために多くの作業をやり直さずに済む)。
第三に,スキニングやリギングなど異分野の専門性が途中で入るため,コンテンツを人から人へ容易に受け渡せ,将来に向けて統一フォーマットで保てること。
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そこで作ったのが,各制作ソフトの間に立つツールだ。中核はUSD(Universal Scene Description)のファイル構造。
USDはPixarが開発したオープンソースの3Dシーン記述フォーマットで,データを1つのバイナリではなく“レイヤー”で保持できるため,個々の変更をレイヤー単位で残せる。各DCC用の独自プラグインで,正しいソフト上の該当データへ素早く飛べるようにし,さらにUnrealへの書き出しツールでリモート接続してファイルを注入し,メタデータや設定を直接行う。
このツールはHoudini内で動き,グラフベースのUIを生かして,アセットごとに必要な処理を組み立てる。各ノードがデータに適用する処理を表す。Perforce連携で他のアーティストと衝突しないようにしつつ,このHoudiniプロジェクトが全コンテンツの単一の入り口になる。プロジェクトブラウザで作業したいキャラクターを選べば,必要な全ソースファイルへのリンク,最新版,正しいソフトと必要プラグインが揃う。
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仕組みはこうだ。データを注入する起点となる「オリジンノード」を選ぶとビューポートにそのノードの寄与が見え,編集ボタンを押せば該当ファイルが該当ソフトで開き,変更してツールに戻ると反映される。スキニングやブレンドシェイプなどを行う多様な「プロセッサノード」は,データの読み書きに厳密なテンプレートを持つ一方,その間で何をするかは開発者次第で,将来に向けてツールや処理を拡張できる。UVレイアウトを扱うノードはHoudiniのメッシュ編集機能を用い,ペインターノードはプロジェクト全体をSubstance Painterへ送ってテクスチャ作業を行うなど,Houdini外へデータを送ることもできる。キットバッシュ時に微調整する「tweakノード」もある。
USDの利点は,これらの変更がすべて別レイヤーに保存され,入力データから独立する点だ。データには頂点番号ではなく“パス”でアクセスするため,ファイル内のどこにあっても「帽子」を指定できる。処理の前後でジオメトリの形も分かるため,変更を別の敵キャラへ再投影でき,帽子のトポロジーを後から更新しても,再処理時に同じ変更を適用できる。
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最後の「エクスポートノード」で,USDネットワークからデータを取り出し,ゲーム用に組み替えてUnrealへ送る。ここまで各パーツは個別(独自のテクスチャやスキニングデータ)だが,ここでどのパーツを同じメッシュにまとめるか,どの面にどのマテリアルを割り当てるか,テクスチャの詰め方やチャンネルの使い方などを決める。
重要なのは,後からジオメトリを足す必要が生じても,UVの再調整やテクスチャのやり直しが要らないこと。ツールが新しい空間へテクスチャを再レンダリングしてくれる。派生作業の負担を減らすことで,アーティストは自信を持って,レビューを待つことなく自分の直感で作り続けられる。
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仕上げはUnrealへ引き継ぐ。アーティストがキャラクターの技術的な設定(色のバリエーションや各種トグルなど)を自分で組めるツールを,チームで共有する。これらはレビューにも使う。
マテリアルはほぼすべてのキャラクターアセットが完全にプロシージャルだ。アーティストはメッシュの性質を定義するサーフェスマップをベイクし,どこにどのマテリアルや色を置くかのマスクを描くだけ。
あとはUnrealでマテリアルを設定する。テンプレート化された形式で,塗装金属や使い込まれた革といった異なるマテリアルのレイヤーをドラッグ&ドロップで重ね,色調や摩耗・汚れの量を後から調整できる。
テンプレートは通常のUnrealマテリアルなので,未対応のものが要ればアーティスト自身が作れる。パターンをメッシュの部位ごとに適用し,色・回転・サイズを変えることも可能だ。メッシュを更新してもマテリアルが追従し,再テクスチャリングは不要。すべて入力に基づくプロシージャルだからだ。
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これらのツールは非常に使いやすく作られており,実はアートディレクターやコンセプトアーティストも使っている。特定のロゴを入れたい,あるスキンの色を変えたいといった最終調整を,アーティストに差し戻して作り直してもらうことなく,自分で行える。
投影されるテクスチャはすべてUV空間で同じマテリアルに入りつつ,サーフェスの性質や色を細かく制御できる。実演では,既存アセットを,異なるマテリアル・色・テクスチャ・パターンで“まったく新しいバリアント”に作り替える一連の流れが示された。テクスチャをやり直す必要はなく,そのままゲームで使えるファイルとして即座に確認できる。
Dalberg氏は最後に,「プロセスの一部として,分野の境界をぼかし,誰もが自分の創造性で手助けし貢献できるようにしたい」と述べ,セッションを締めくくった。




















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