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「シュレディンガーズ・コール」はいかにして生まれたか。Achabox氏の下積み時代と次回作の構想が語られた「吉Pラジオ」ステージレポート[OIGS2026]
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印刷2026/10/04 09:30

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「シュレディンガーズ・コール」はいかにして生まれたか。Achabox氏の下積み時代と次回作の構想が語られた「吉Pラジオ」ステージレポート[OIGS2026]

 2026年10月3日,大阪でインディーゲームのイベント「OSAKA INDIE GAMES SUMMIT 2026」が開幕した。そのステージにて,注目のトーク番組「吉Pラジオ」出張版が実施された。

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 「吉Pラジオ」は,OIGSオフィシャルサポーターを務める吉田修平氏(yosp代表取締役)と,BitSummitの運営に立ち上げ初期から携わっている村上雅彦氏(Skeleton Crew Studio 代表取締役)が,東京・渋谷の「404 Not Found」を拠点に展開している公開収録型のトーク番組だ。
 旬のインディーゲームクリエイターを招いてその創作を深掘りする本番組。今回は本来予定されていた東京での配信が台風の影響で「吉Pナイト」を含めて見送りとなったため,急遽,ここ大阪の地で実施する運びとなったという。

 ステージに登壇したのは,国内外で高い評価を獲得したアドベンチャーゲーム「シュレディンガーズ・コール」(PC / Nintendo Switch)を手掛けたアクロバティックチリメンジャコのAchabox(アチャボックス)氏だ。ゲーム業界へ足を踏み入れるまでの紆余曲折,開発中の壮絶な挫折,そして気になる次回作の構想まで,赤裸々に語られたトークの模様をお届けしよう。

(左から)村上雅彦氏,吉田修平氏,Achabox氏
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任天堂を目指した学生時代と,映像制作への没頭


 幼少期を「絵を描くのもゲームもドッジボールも,全方位に全力でした」と振り返るAchabox氏。物心つく前からゲームパッドを握り,学生時代にはゲームを題材にした4コマ漫画を描くほどゲームカルチャーにどっぷり浸かっていたという。

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 高校生になると「任天堂を目指すんだ」という意識のもと,ゲームを作るために美大へ行こうと思い立ち,京都精華大学イラストレーションコースへの進学を決意。高校生の時点で任天堂などの大手ゲーム企業に就職した先輩たちのポートフォリオを見せてもらい,大学在学中に到達すべきレベルを逆算してリサーチしていたという。

 しかし,大学に入ると他コースの講義にも潜り込むなかで,「映像制作」の面白さに開眼。卒業後はフリーランスとして,インディーミュージシャンのミュージックビデオや,企業プロモーション映像の制作に熱中することになる。


デバッガから始まったゲーム業界への道


 そんなAchabox氏が再びゲーム制作へと引き戻されたきっかけが,村上氏らが主催する「BitSummit」だった。
 2014年ごろに記録映像の撮影スタッフとしてインディー開発者たちの熱い想いに触れたことで,「自分は本当にゲームを作りたかったんだ」と自覚したというAchabox氏。翌2015年の第3回BitSummitでは,急遽欠員が出たメインステージの司会アシスタントに抜擢され,分厚い台本を渡されて舞台に立った経験も明かされた。

鴨川デルタに2メートルの巨大ショートケーキを設置して,毎月ゲリラピクニックを行うユニークなコミュニティ活動にも参加。のちに台湾へも波及したのだとか
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 ゲーム開発の足がかりを掴むため,まずはQ-Gamesでデバッガのアルバイトを開始。吉田氏は「優秀なデバッガが制作プロセスを理解し,ディレクターやプロデューサーへとステップアップしていくのは,海外でも王道のキャリア」と頷く。
 その後,京都のゲームコミュニティを通じてroom6の木村征史氏と出会い,同社へ合流。Nintendo Switch版「サリーの法則」の追加コンテンツやUI,PV制作に携わることとなる。

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 なお,room6への正式入社を打診された際,かつての夢だった任天堂にダメ元で応募したエピソードも披露。結果,「落ちました!」と報告したAchabox氏を,木村氏が温かく迎え入れてくれたという。
 また,在職中には有志とともに手掛けたスマートフォン向け育成ゲーム「ことだま日記」が累計100万ダウンロードを超えるスマッシュヒットを記録し,クリエイターとしての手応えを掴んでいった。

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打ち切りの危機も。「シュレディンガーズ・コール」の4年間


 コロナ禍を機に「自分のゲームを作りたい」という欲が高まっていた時期,Achabox氏は大手出版社のインディーゲーム開発支援プログラムへと応募した。そのときは落選した氏だったが,「講談社ゲームクリエイターズラボ」の2回目と,初回となる「集英社ゲームクリエイターズCAMP」の双方で,「シュレディンガーズ・コール」の企画が採択・受賞されるという快挙を成し遂げる。

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 ただ,プログラミングもシナリオ執筆も自身では行わないスタイルのため,企画を通したあと,集英社ゲームクリエイターズCAMP経由でエンジニアのame氏を公募で採用した。シナリオとプロデュースには,コロナ禍で舞台の仕事がストップしていた入交星士氏を迎え,3人体制のコアチームを結成。Skeleton Crew Studioの旧オフィスの一角を間借りし,開発がスタートする。

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 テーマに据えたのは,コロナ禍の閉塞感のなかで自身を精神的に救ってくれた「電話」だ。
 しかし,開発期間4年におよぶ道のりは平坦ではなかった。勢いと情熱で作った第1章のプロトタイプはパブリッシャである集英社ゲームズからも絶賛されたものの,いざ最終章まで物語を広げようとした際,制作がうまくいかずに迷走。開発2年半の時点では,「これがダメならプロジェクトを打ち切る」という危機にも直面した。

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 そんな紆余曲折もあった本作だが,幾度もの試行錯誤の末に完成した。そして,世界的なレビュー集積サイト「Metacritic」では,最終的に89点というインディーゲームとして突出したスコアを叩き出す。
 ブラジルで開催されたゲームショウに入交氏が単身乗り込み,泥臭く海外メディアへ直接コンタクトを取ってレビューを獲得していったというエピソードも含め,チーム一丸となって掴み取った栄冠だった。

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 なお,アクロバティックチリメンジャコの立ち上げから,制作打ち切りの危機,その解決までは「シュレディンガーズ・コール」リリース直前のインタビューでも語っているので,併せてチェックしてほしい。

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 「シュレディンガーズ・コール」は,どんな人たちによって,どんな思いで作られたのか。開発チームのアクチリことアクロバティックチリメンジャコの3人と集英社ゲームズに,3人での制作のこと,開発中の迷いや工夫,作品の届け方について聞いた。

[2026/05/26 12:00]


次回作は「ホラー」か「ケレン味あるポップ」


 番組の終盤では,ファンがもっとも気になるAchabox氏の「今後」に話題が及んだ。

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 現在は特定のパブリッシャとの独占契約に縛られておらず,フリーの立場で次回作の構想を練っている段階とのこと。年内は「シュレディンガーズ・コール」の語られていない世界観や裏設定の発信を続けつつ,来年に向けて企画を固めていく方針だ。

 Achabox氏は「次は必ずしも自分がディレクションすることにこだわらず,入交氏の企画などを含め,チームとして一番面白いものを形にしたい」と語る。それに対して村上氏は「ゲームを一本きちんと作り切り,世界的な高評価を得たチームが次の企画を練っている状態は,パブリッシャにとっても大きなチャンス」と力強くエールを送った。
 なお,現在頭のなかにあるアイデアの種としては,「めちゃくちゃ怖いホラー」と,可愛らしさのなかに棘がある「ケレン味のあるポップな作品」という両極端な2軸が存在しており,ビジュアルのプロトタイプを作りながら模索している最中だという。

 挫折と試行錯誤を繰り返しながら,独自の感性で世界を魅了する作品を生み出したAchabox氏は,次の作品について「(前作は4年かかったので)2年,長くても3年以内にはファンのもとへ届けたい」と意気込みを見せる。
 チームが次に紡ぎ出す新たな物語がどのような姿を見せてくれるのか,今後の動向から目が離せないところだ。

次回の吉Pラジオは10月24日に収録。ゲストはmake.ctrl.Japan代表の宮澤卓宏氏と,レベルファイブ代表取締役社長の日野晃博氏だ
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