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SNSを騒がせた“インドシミュレーター”から考える,本格ビリヤニと「Venba」が描いた移民の食卓。俺のコラボカフェ:Menu 089
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印刷2026/06/27 10:15

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SNSを騒がせた“インドシミュレーター”から考える,本格ビリヤニと「Venba」が描いた移民の食卓。俺のコラボカフェ:Menu 089

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 4Gamerをご覧の皆様,こんにちは。クッキングエンターテイナーの大西哲也です。ゲームに登場する料理をプロの料理人が本気で再現し,プロ目線で勝手に検証する「俺のコラボカフェ」。今回もよろしくお願いします。

 先日,Xで興味深い映像が話題になっていました。それは,「Indian Street Food Simulator」と呼ばれるゲームの映像です。大量のスパイスが舞い,電車の周囲は大混雑。屋台の料理は素手で豪快に扱われ,衛生観念も日本人からするとかなり独特です。

 そんな“インドのストリートフード文化”を描いたような内容で,多くの人が驚きと笑いとともに拡散していました。ただ,この映像は実在するゲームではなく,AI生成による動画でした。



 とはいえ,私は少し複雑な気持ちでした。というのも,過去にインド各地を訪れたことがあるからです。デリー,アグラ,ジャイプール,バラナシのスパイス市場を歩き,屋台で食事をし,現地の料理人から話を聞きながら食文化を研究したことがあります。

 確かに,あの映像には誇張もあります。しかし一方で,あの圧倒的な熱気や生命力は決して嘘ではありません。街全体が巨大な厨房のように機能し,人々が食べ,働き,語り合う。インドの魅力は料理だけでなく,その背景にある人々の営みそのものにあるのだと思っています。

 もし本当にインドの街並みを細部まで再現したシミュレーションゲームがあるなら,私は間違いなくプレイしたいですね。

 さて,そんなインドをテーマにしたゲーム作品のなかで,今回取り上げたいのが「Venba」です。本作はカナダのインディースタジオ「Visai Games」が開発したナラティブ型料理アドベンチャーゲームで,1980年代,南インド・タミル地方からカナダへ移住した一家を描いた作品です。

 主人公は母親のベンバ。プレイヤーは破損してしまったレシピ本を修復しながら,家族の物語を追体験していきます。

 料理ゲームと聞くと,注文をさばいたり,素早く調理したりする作品を想像するかもしれません。しかし「Venba」はまったく違います。欠けたレシピの情報から調理工程を推測し,スパイスの順番や火加減を考えるという,料理そのものがパズルになっているのです。

 さらに,移民としての苦悩や文化的アイデンティティ,親子のすれ違いといったテーマが丁寧に描かれています。料理が単なる回復アイテムではなく,「家族の記憶」そのものとして扱われています。

 その完成度の高さから,本作は英国アカデミー賞(BAFTA)のゲーム部門でデビュー作品賞を受賞しました。ゲームとしても,文化作品としても非常に評価の高い一本です。

「Venba」は,1980年代に南インドからカナダへと移民した一家の半生を描いたゲームだ
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 そんな「Venba」に登場する料理のひとつが,今回作る「ビリヤニ」です。最近,日本でも専門店が急増し,カレー好きの間ではすっかり定番となっています。
 しかしビリヤニは,単なるスパイス炊き込みご飯ではありません。私は世界の米料理の中でも最高峰のひとつだと思っています。

 鍋の底にはスパイスと肉を煮込んだ濃厚なグレイビー。その上に半茹でのバスマティライスを何層にも重ねる。そして鍋を密閉し,極弱火で蒸し上げる。

 この「ダム」と呼ばれる調理法によって,下層から立ち上がる香りと水蒸気が米全体へ行き渡ります。

 食べる場所によって味も香りも変わり,肉の旨味が強い部分やサフランの香りが支配する部分。スパイスだけを感じる部分など,一皿の中に複数の料理が共存しているような感覚です。これは偶然ではなく,すべてが計算された結果なのです。料理人として見ても,非常によくできた構造をしています。

 「Venba」で料理を作る体験と,実際にビリヤニを作る体験は驚くほど似ているかもしれません。スパイスを理解し,工程の意味を考え,失敗の理由を推測する。ゲーム内でレシピの謎を解く感覚と,現実でビリヤニを完成させる感覚は非常に近いのです。料理とはパズルなのかもしれませんね。

 というわけで今回は,「Venba」に登場するビリヤニをベースに,私なりの理論で最適化した本格ダム・ビリヤニを作ります。

 それでは調理開始です。

◆材料(4人前)
・主素材
バスマティライス……300g
羊肉または牛肉……400g
玉ねぎ(スライス)……150g
カットトマト……100g
青唐辛子(スライス)……2本
サラダ油……大さじ3

・マリネ液
プレーンヨーグルト……80g
ニンニク・ショウガ(刻み)……各大さじ1
塩……小さじ1

・ホールスパイス
ベイリーフ……2枚
グリーンカルダモン……4粒
クローブ……4粒
シナモンスティック……1本
フェンネルシード……小さじ1

・パウダースパイス
ビリヤニマサラ(ガラムマサラでもOK)……大さじ1.5
チリパウダー……小さじ1
ターメリック……小さじ1/2
塩……小さじ1

・仕上げ用
サフランミルク
(牛乳50ml+サフラン少々)
フライドオニオン……30g
ミント……ひとつかみ
パクチー……ひとつかみ

トマトと油を置き忘れました……
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◆工程(1) 肉をマリネする

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まず肉に
・ヨーグルト
・ジンジャーガーリックペースト
・塩
 を入れて混ぜます。最低1時間。できれば一晩冷蔵庫で置きます。

◆工程(2) グレイビーを作る
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 鍋に油を熱し,ホールスパイスを投入。香りが立ったら玉ねぎを加えます。濃い茶色になるまで炒めてください。玉ねぎの甘味とうま味を引き出す重要工程です。

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 続いて青唐辛子・トマトを加えます。トマトが崩れたらパウダースパイス投入。香りが立ったところでマリネした肉を加えます。

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 肉の表面を焼き固めたら蓋をして30〜40分。肉が柔らかくなるまで煮込みます。

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◆工程(3) 米を「半茹で」させる

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 大きな鍋に2.5リットルほどの湯を沸かし,塩を大さじ2加え,30分浸水したバスマティライスを投入。4分茹でます。


◆工程(4)レイヤリング

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 鍋の底にグレイビーと肉を半量。その上に半茹でした米を半量。さらに残りのグレイビーとミント,パクチー,フライドオニオン,そして残りの米を入れます。最後にサフランミルクを全体に散らし,蓋をします。

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◆工程(5) ダム(蒸し上げ)

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 鍋を密閉したまま,極弱火で15分→火を止めて10分蒸らします。この工程をインドでは「ダム」と呼びます。鍋の内部では水蒸気と香りが循環し,米一粒一粒へスパイスの香りが浸透していきます。ここは絶対に蓋を開けないこと。我慢です。

◆完成

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 蓋を開けた瞬間,サフラン,カルダモン,シナモン,ミント,パクチー,そして肉の香りが一気に立ち上ります。これがビリヤニ最大の快感です。

実食



 うまい! まず米がうまい。日本米とはまったく違う軽やかな食感。その中に肉のうま味とスパイスの香りが複雑に入り込んでいます。
 面白いのは,一口ごとに味が変わること。まるでゲームの探索のように発見があります。パズルゲームのように「なるほど,だからこの工程が必要だったのか」という理解が積み重なっていく感覚がありますね。

 料理もまたゲームと同じくルールを理解すると,一気に面白くなるのです。

 今回のテーマはいかがでしたでしょうか? 面白いと思ったり,実際に作ったりした人は「#俺のコラボカフェ」「#COCOCORO」といったハッシュタグを付けてSNSに投稿してくれると嬉しいです。
 そして,実はクラウドファンディングでビリヤニをおいしくつくるための鍋セットを販売しているので,ご覧いただけると嬉しいです。

それでは,またお会いしましょう。したっけ!


■■大西哲也(クッキングエンターテイナー)■■ あるときは料理研究家,またあるときは「COCOCOROチャンネル」のYouTuber。しかしてその実体は……料理を通じて多くの人を喜ばせたいクッキングエンターテイナーだ! ちなみに大西氏は,今回の記事を書きながら,インドを旅していた頃の写真を見返していたという。猛烈な暑さ,クラクションの大合唱,どこからともなく漂うスパイスの香り。そして毎日のように食べたビリヤニ。旅の記憶はいつも,食とともにあるのかもしれません。


※次回の掲載は2026年7月25日を予定しています
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