「ブルーアーカイブ」のPDとして知られるNEXON Games IO本部長のキム・ヨンハ氏と,「Lobotomy Corporation」「Library Of Ruina」「Limbus Company」を手がけるProject Moon代表のキム・ジフン氏の2人が登壇し,「自分がプレイしたかったゲームをつくるーー韓国の作家主義PDによるライブサービス運営記」というテーマの対談が行われたのだ。
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まず話題に上ったのは,副題にもある「作家主義」という言葉の重さだ。
両者とも「作家主義と呼ばれるとプレッシャーを感じる」と苦笑する。キム・ヨンハ氏は「大げさな理念を掲げているわけではなく,自分がおもしろそうだ,作りたいと思うものを作ってきただけ。気に入ってくれる人が現れ,その方向性が見えるなかで自分の考えも少しずつ変わり,今の形になった」と語る。最初から狙ったものではなく,結果的にそう見えているだけ,というわけだ。
キム・ジフン氏も同様だが,作り方は対照的だ。「Lobotomy Corporation」のときは作りたいものがはっきりしていたが,2作目の「Library Of Ruina」では,本当は自動戦闘を“眺める”ようなゲームを作りたかったという。
それが気づけばデッキ構築型になり,ちょうど隆盛し始めていた「Slay the Spire」系に強く影響を受けつつ,最終的にはシステムの形よりも伝えたい物語やテーマに重きを置くようになった,と振り返った。
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ジフン氏は「学生のころからゲームを作るたび,自分が作りたいゲームの姿が浮かばない壁にぶつかってきた。だが世界観や物語の中で,ここははっきり見せたいというイメージが固まると,ゲームプレイの細部が未定でも道しるべになる」と自身のスタイルを説明。
一方,ヨンハ氏は「自分も最初から体験中心だったわけではない」とし,初期作「魔法図書館キュラレ」(iOS / Android)では美少女コレクションゲームの文法を発展させたい思いが強く,体験を意識し始めたのはVRゲーム「FOCUS on YOU」からだと明かす。VRで重要となる実在感(プレゼンス)を突き詰めた経験が,「ブルーアーカイブ」でプレイヤーの体験を一つずつ組み立てる設計思想につながったという。
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話題は,両者のゲームがライブサービスとして運営される宿命へと移る。パッケージと違い,プレイヤーのフィードバックを受けて変化せざるを得ない。
揺るぎない世界観を持つジフン氏はどう向き合うのか。「実際に大きく修正した事例もある」と認めつつ,「Library Of Ruina」では設定の不備や描写不足を感じ,1週間かけてストーリーを作り直したこともあるという。それでも「創作者として描きたい世界とプライドはしっかり持っている」と語った。
対するヨンハ氏は,自社パブリッシングの強みを生かしつつも,自身を「注目されるのが好き」と表現した。「更新時の反応やレビューを見るのが人生の楽しみで,このゲームを作った理由そのもの」とし,エゴサーチをして反映することがモチベーションだと笑う。配信者のプレイのハイライトを探して見ては誇らしく感じ,同時に物足りない点が気になってまた修正してしまう“沼”も明かした。
プッシュした結果がユーザーに受け入れられ,「先生」※の心に届いたと確信できるとき,フィードバックは創作の大きな支えになるという。
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※「ブルーアーカイブ」でのプレイヤーの呼称
ヨンハ氏が「いつでも土下座する覚悟で生きている」として持ち出したのが,創作者のメンタルケアという重いテーマへ。ヨンハ氏は「何か起こるたびに新しい趣味が増える」とし,「ブルーアーカイブ」サービス初期の安定性トラブルの最中にキーボードの自作を始め,のちにコーヒーのドリップにも手を広げたと語る。エゴサーチで心がすり減りつつも,スイッチを外し潤滑油を塗るような“瞑想”で距離を取るのだという。
ジフン氏は「10年前も数年前も,数年後には自分のメンタルは強くなっていると思っていたが,今も一喜一憂してしまう」と告白した。「責任があるから逃げられない。だが逃げればその先がない。だから自分で解決するしかない」PDという立場の覚悟がにじむ。
グローバル展開の話題では,「ブルーアーカイブ」の戦略が語られた。
ヨンハ氏は「正直,運に助けられた部分が大きい」としつつ,当初の韓国サービスがうまくいかなかった反省から,あえて日本を先行リリースの対象にしたと明かす。これは「このジャンルはまず日本で成功してこそ他地域でも大きく伸びる」というパク代表の助言がきっかけだった,という。
[インタビュー]私が決めるのはゲームの根幹部分の“フレームワーク”で,中身はプロデューサー達が頑張ります―――開発費100億円でも,ユーザーテストが一番信頼できると語るNEXON Games
韓国を代表するゲーム開発会社であるNEXON Gamesの代表であるパク・ヨンヒョン氏は,「The First Descendant」をローンチして,ようやく肩の荷が1つおりたようで,こっそり東京ゲームショウを訪れていた。重要な会議の1時間前を無理矢理もらって,昨年11月のG-STARで(聞きたかったけど)聞けなかった話を聞いてみよう。
自分たちの“味”と市場ニーズの接点として選んだのが,日本でよりクラシックな存在である「学園もの」という枠組みだった。日本のコミックマーケットに単独タイトルとして参加するまでに至ったが,「狙ってはいたが,狙いどおりにいつも実現するわけではない。多くの方に支えられた結果」と謙虚に語った。
ジフン氏は,独特な世界観ゆえの翻訳の難しさを語る。「Lobotomy Corporation」「Limbus Company」は韓国とSteamでのグローバル同時リリースを採っているため,シナリオが書かれるそばからリアルタイムで翻訳する体制が必要だった。
対応言語を英語と日本語に絞った理由は,「他言語では翻訳の良し悪しを自分で判断・管理できないから」と,各国モチーフの固有名詞のニュアンスを保つ難しさにも触れた。それを支えるのは,世界観を愛する翻訳者たちの情熱だという。
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印象的だったのは,ジフン氏が語った海外ファンとの交流だ。オフラインイベントでは開場20〜30分で当日分の待機列が埋まるほどの熱気を体感した一方,より深く心に残ったのは各国から届くファンレターだという。不治の病と闘う人,家庭内暴力を経験した人らが,それぞれの言語で「あなたの物語が生きる力になった」「続きが気になるから生きていきたい」と綴ってくれた。「自分の作品が,誰かの人生の意味になり得る」と実感した経験だったと語る。その原点には,高校時代にプレイした「ペルソナ4」があるという。コミュニティを重ねることが物語の核となる作りに,現実でも人とのつながりを大切にするよう促されたのだそうだ。
そして対談は,最も白熱したAIのテーマへ。ジフン氏は,創作物へのAI使用に強い抵抗感があると率直に語った。「自分が求める楽しさは,創作者が味わった苦しみのエッセンスだ」。
その苦しみが一滴ずつしたたってできた“涙の味”を,ファンは甘く感じて楽しんでくれている。「同じものでも,そこにある悩みや真摯さが伝わるから評価される。つまり「キムジフンの涙の味がするから」選ぶ理由になるというわけだ。AI製では,その思いが込められているか分からない。
氏は「いずれゲームにも有機栽培マークのような,AIの香りは一切しませんを示すラベルが貼られる時代が来るかもしれない」と表現し,重要なのは作品にどれだけ創作者の時間と苦しみが注がれているかだと述べた。
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もっとも,両者ともAIを全否定するわけではない。
ジフン氏は「AIは創作プロセスの一ツールとしては使えるが,最終成果物をAIに作らせるのは解決策にならない」とし,「Steamのゲーム本数は2倍以上に増えたが,似たような“AIスロップ”ばかりで,そういうものは選ばれない」と指摘し,AI活用の最前線は大企業の動きを見て追随する考えだと語った。
ヨンハ氏はリサーチ用途などでAIを活用しているとしつつ,「料理は誰にでもできるが,誰にでもうまくできるわけではない」と表現した。
Steamやエンジン,そしてAIによって制作のハードルは下がり続けるが,「誰もが似たものを量産できる世界でこそ,自分だけのものを鋭く突き詰めることが重要になる」と述べた。
AI時代におけるゲームディレクターの役割について,ヨンハ氏は「役割自体は大きく変わらない」としつつ,AIが技術面を加速する分,各人がより広い視野=ディレクター的視点を持つようになると予想した。
一方で,強い主観を持つ人材どうしの衝突をいかにシナジーに変え,コンセンサスを取ってチームをまとめるかが一層重要になると語る。「解決できているか? それは未来の領域。答えは未来に見つかるかもしれない」と率直だった。
求められる能力も,技術的スキルのハードルが下がるなかで,人と人を調整する力や,AIにはない“その人らしさ”をどう出すかへと移っていくとの見立てを示した。
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締めくくりの一言で,ヨンハ氏は再び「テイスト」を持ち出した。
「自分はどんなゲーム,どんなジャンルやシステム,世界観が好きなのか。自分に問いかけ,自分だけの味を見極め,鋭く研ぎ澄ましてほしい」。
ジフン氏は起業の観点から,「振り返れば運がいちばん大事だった。自分より努力家も優秀な人もいたが,会社が閉じたケースも多く見てきた。運は自分でどうにもできないからこそ,運が巡ってくるまでしぶとく生き残る精神的,肉体的スタミナがいちばん大事」と語る。「水面に浮かんでいるには,足で水をかき続けなければならない」という言葉で,2人の“対談は幕を閉じた。




















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